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十一話 風魔法の実習授業

Author: Tubling
last update Last Updated: 2025-05-29 17:43:01

 今日は風のクラスで中級魔法である「フェザークロス」の練習をする日だ。

 魔力でつくられた羽根を大量に作り出し対象を攻撃する中級風魔法で、最上級生ともなれば上級魔法を使える生徒も多々いるのだけれど、まだ中級魔法までの生徒も半分くらいはいる。

 出来ない事をさせると大変な事故になりかねないし、能力のある生徒も皆中級魔法レベルに合わせて練習する事が多い。

 幸い風魔法のクラスはそこまでやんちゃな生徒は多くない……と思うので、それほど大きな問題は起きずに授業をする事が出来ていた。

 「…………風の精霊よ、我が魔力を以って命じる。汝の子らをその力で守りたまえ――――[防御魔法]シールド」

 私は教室全体を保護するシールドを張り、教室が破損する事がないように準備をする。

 もう魔法に関しては、クラウディア先生が使うことが出来ていた魔法は全て使えるようになっていた。

 コツをつかめばなかなか楽しいものね。

 あとは私の前に自身を防御するストームシールドを発動させ、風の攻撃魔法を吸収出来るようにする。

 生徒たちには、そこに向かってフェザークロスを放ってもらうのだ。

 「みんな、用意は出来たかしら?」

 「「はい!」」

 元気な返事が返ってきたところで練習を始める事にした。

 「じゃあ順番に発動させてみて」

 最初はおさげの女生徒デイジーから始まった。

 彼女は子爵令嬢で、今のところ中級魔法まで使える――――フェザークロスも綺麗に発動させ、ホッとした表情を見せて次の生徒に代わった。

 次は子爵令息のパトリックが難なく発動させ、黒いサラサラの髪をなびかせながら眼鏡をクイッと上げて次の生徒に代わっていく。

 物凄く頭脳派って感じね。

 その次は男爵令嬢のティファ、次は筋肉質な男爵令息のレックス……生徒達が次々と成功させていく――――この調子なら順調に終わりそうね。

 「いい感じよ!その調子でどんどんぶつけてきて」

 私の前のストームシールドが生徒達のフェザークロスを吸収していくので、私自身には傷1つつかない。

 魔法って危険もあるけど、こうやって身を守る事も出来るんだなと感心してしまう。

 6人目まで無事に成功したところで、伯爵令嬢のマデリン・トンプソンの番になった。

 彼女はとても美しくて自分に自信のある生徒なのよね。

 クラスにはもう一人美しい生徒がいて、先
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